世界が驚く「奇跡の7分間」! 「まんが ハーバードが絶賛した新幹線清掃チームのやる気革命」(矢部輝夫著・宝島社)

知りませんでした。

新幹線の清掃を7分間で行っている人たちのことを。

新幹線が東京駅に到着して再び出発するまでの7分間に行われる清掃作業。外でそれを見ている外国人観光客や、もちろん乗車を待っている日本人客が演劇のように観覧して、清掃終了時に拍手大喝采が起きるのだということも。

まるでそれは、「7分間の新幹線劇場」。

それは、取材に訪れたアメリカのCNN放送によって「7分間の奇跡」と紹介され、
ハーバード大学経営大学院の必修教材にもなっているんだということを。

全く知りませんでした。

私があれこれ言うよりも、時事通信社が公開している次のyoutube動画を見てもらえばと思います。

世界が驚く「奇跡の7分間」! 「まんが ハーバードが絶賛した新幹線清掃チームのやる気革命」(矢部輝夫著・宝島社)

この「奇跡の7分間」を行っているのは、JR東日本が運行する新幹線(東北・上越・北陸・山形・秋田)の清掃業務を請け負う「JR東日本テクノハートTESSEI」(テッセイ)。
そして著者は、株式会社JR東日本テクノハートTESSEIで、元おもてなし創造部長をされていた矢部輝夫さんです。

今でこそ世界から注目されているわけですが、矢部さんが異動してきた当初のテッセイはというと、「与えられた清掃の仕事だけを淡々とこなせばいい」という言われたことだけをこなす消極的な姿勢であったり、「キツい・汚い・危険」といういわゆる3K職場で、やる気と誇りを持てない人たちが集まりやすい環境だったとのこと。

仕事に「誇り」と「生きがい」を取り戻す改革を一歩一歩進めてきた結果が、今日の「7分間の新幹線劇場」へとつながっていったのですね!

それでは、何がテッセイをここまで変えたのか…

矢部さんは言います。

現場で働く人たちが仕事への「誇り」と「生きがい」を持てる会社にすることー。
それは大変難しいことのようですが、実はスタッフのやる気を引き出すスイッチ」は、ちょっとしたところに転がっています。そのスイッチを押していくことで、テッセイでいえばスタッフ一人ひとりが「たかが掃除」という仕事へのネガティブなイメージを乗り越え、「自分の思い」を素直に語り、ひとつずつ「実践した」ーその結果が「セブン・ミニッツ・ミラクル」を引き起こしたのです。

では具体的にはどんなことをしてきたのか。
本書からいくつか紹介します。

価値観の転換ー自分たちにしかできないことを見つけて、それをブランドにする

基本的に「掃除だけをやっていればいい」という考えの人が大半だった当時のテッセイ。
そこで、「私たちの商品は何なのか?」をスタッフと一緒に探し始めたのだそう。

東京駅・上野駅からJR東日本の新幹線に乗車する乗客は、1日になんと約9万人。
その膨大な乗客がそれぞれの思いを抱いて旅行や仕事のために新幹線を利用しており、その新幹線の座席やテーブルをきれいに掃除して車内を快適に利用できるように整えることが仕事。

しかし、例えばお客様が道に迷っているのに「掃除だけが仕事」だと案内しなかったら…。
「こんな機能があればお客様が便利になる」と気づいているのに「私の役目じゃない」と改善しなかったら…。

たとえ完璧な清掃をしたとしても、お客様の旅が不満足なものに終わってしまったとしたら自分たちの仕事も無駄になってしまうのではないか。

こうした話し合いを続けていくうちに、テッセイはサービス業であって、
「お客様に旅を気持ちよく過ごしてもらうトータルのサービスを提供することが私たちの仕事」
「その質を左右するのがおもてなし」

だと考え、スタッフにこの新しい価値観を実践してもらうことになったんだそうです。

現場の声を否定しないー「とんでもない話」を気軽に口にできる環境

スタッフが活き活きと働き、成果を出す環境作りのために特に意識しているのが、スタッフからの提言や提案に対して「NOと言わない」「現場の声を否定しない」ということだそう。

スタッフからの提案に対して、たとえそれが「とんでもないこと」だったとしても、頭ごなしに否定するのではなくて、「なるほど面白い。できるかどうかは約束できないが、実現に向けて一緒に考えよう。」と答えるようにしているそうです。そうすることで、当事者だけでなくスタッフ全体にも前向きな雰囲気が生まれるのだと。

もともと、会社を良い方向に導くようなアイデアや改革は、多くの人から反対されるような「とんでもない話」から生まれることも多い。

でも、そういうアイデアや提案を持っているスタッフがいても、言えるようなリーダー、上司、経営者でなければ口に出せませんからね。

どんなに「とんでもない話」でも、スタッフが気軽に口にできる環境こそ、会社の提案力や実行力の向上に直結すると考えているから、テッセイでは、「明るい職場」「風通しのよい職場」「みんなが意見を堂々と言える職場」作りを大切にしているそうです。

まとめ

仕事への充実感や自信、誇り。
個々のスタッフの力と本物のチームワーク。
そして現場を支える経営体制。

一つ一つの実践が「革命」となり、「奇跡の7分間」を起こさせたのですね。

矢部さんの言うように、本書で紹介されている取り組みは、一つ一つが小さな試みですが、それを積み重ねてきたからこそ、大きな変革へと繋がったんだなと実感しました。