最近、といってもここ10年ぐらいでしょうか。
とても日本語が気になって仕方がないんです。
いや、自分がちゃんと正しい日本語を使えていると言うつもりも、自信も、毛もないんですがね。
毛は関係ないけど(^_^;A。
コンビニのマニュアル語や、バイト語だけならね、
あ〜また言うてるぞ、こいつら小学校から学び直しなさいね、全く!!
などと、勝手に一人で怒っていればいいのだけれども。
そーいえば、以前ラーメン店で、最後にお金を払う時に、
「ポイントカードのほう、よろしかったでしょうか」
と言われて、頭の中に100個以上の???が浮かんで困ったことを思い出しました(笑)。
しかし最近では、同じ職場の方も「変な日本語」を使っていて、それが妙に気になって仕方がない…
特に気になる言葉が、
- 「◯◯のほう」
- 「◯◯させていただく」
の2つですね。
「◯◯のほう」というのは、使っている人は使い出したら続けて何回も何回も「ほうほうほうほう」言うからね。
もうたまりません(^_^;A
「◯◯させていただく」と合わせ技で使われると、頭が変になりそう…。
- 司会のほう、務めさせていただきます
- 資料のほう、読まさせていただきます
こんな感じで連発されるとね、私の脳のほうがね、思考停止状態にならさせていただいてしまうんですよ、ほんまにヽ(-言-)ノキエーッ!!
ということで、書店でこの新書「バカ丁寧化する日本語ー敬語コミュニケーションの行方」(野口恵子著・光文社新書)を見かけたときは、もうヽ(゚▽^*)乂(*^▽゚)ノ バンザーイ♪して手に取ってそのままレジに向かってスキップしましたね、ワタシ。
帯に「実例その1」が載っていますね。
[ある選挙の立候補者が選挙演説でこう語った]
皆様にワタクシの政策をお訴えさせていただきたく
裏表紙の帯には「実例その2」が載っています。
[殺人事件の容疑者について、若いアナウンサーはこう語った][凶器の使い方を]ご自宅でもかなり練習されていたそうです
実例その2なんて、「(;`・д・´)エッ!?嘘やろ??」ってぐらいで笑ってしまいますよね。
しかも、アナウンサーですから。
著者の野口恵子さんは、日本語・フランス語の教師をされている方。複数の大学で外国人や日本人の学生さんに日本語やフランス語を教えているとのこと。
「はじめに」の中で、「最近、『日本語教室に通って出直して』と思わず言いたくなるような経験をした」そうです。
幼児向けの英語教室を開いているという会社からの電話。
女性「お宅様は六歳までの小さなお子様のいらっしゃるご家庭でいらっしゃいましたか」
著者「いいえ」
女性「ではこれで、お電話のほう、切らさせていただきます」
でいらっしゃるも変だし、しかもいらっしゃいまし「た」と過去になっているのも変ですよね。
そして、お電話の「ほう」って、方角でもないし、「切らさせていただきます」は「さ」がいらないです。
著者は、どうしてこうした表現が使われ続けてしまっているのか、その答えを探るために、日常生活の中で出会う現代日本語の敬語に耳を澄まし、敬語を使う人々を観察しようとこの本を書いたそうです。
【必読】「させていただきたがる人々」緊急レポート!!「バカ丁寧化する日本語ー敬語コミュニケーションの行方」(野口恵子著・光文社新書)
目 次
第1章 させていただきたがる人々(「させていただく」は耳障りか
- 「させていただく」はだれに対して謙遜し感謝の意を表しているのか ほか
第2章 現代敬語考―尊敬表現を中心に
- 私たちは八五郎の敬語を笑えるか
- 敬語の不統一とは何か ほか
第3章 現代謙譲語考(謙遜するとはどういうことか
- 目上の人に向かって「ご紹介してください」と言うのはなぜおかしいのか ほか
第4章 敬語使用と想像力(デジタル的、アナログ的言語コミュニケーションとは何か
- マニュアルどおりに応対する従業員に合わせて、客のほうも、想定される「客のためのマニュアル」に沿った受け答えをせざるを得ないのか ほか
第5章 変わるコミュニケーション(周りを観察しない人、自分を客観視できない人に、他者への敬意を行動で示すことができるか
- 「させていただきたがる人々」は、実は「させていただきたがらない人々」だったのか ほか
まとめ
特に、第1章の「させていただきたがる人々」は、タイトルも秀逸で内容もとても深い!!
そもそも「させていただく」という言葉は、本来、「私が何かをする、それはあなたが許可してくれたからだ、そのことを私はありがたいと思っている」という意味を込めて使われるものだと。
だから、例えば、放送局を退職した元アナウンサーが、一般の人に向けた講演会で、
「局アナ時代は、この番組を担当させていただきました」
などというのは、講演を聞いている人たちが元アナウンサーに番組担当の許可をした訳ではないから、へりくだって立てる相手を間違えていておかしい、ということになるんですね。
この他にも
- 「すみませんが、頭痛がひどいので早退させていただきたいのですが」
- 「がんばらせていただきました!このお値段で放出いたします」
- 「ご意見のとおり追加して記述させていただき、より充実した内容とさせていただきます」(市役所の広報)
などなど、日常の中で使われている「敬語」を例にあげ、
- 文法として本来どうあるべきなのか
- それを使う人の心理はどうなのか
- 受ける人の心理はどうなのか
といった具合に、色々な角度からとらえようとしていてとてもわかりやすく、理解しやすくなっています。
本来、こうした日本語について書いた本は、文法的、国語的な細かい内容でとっつきにくくなるものですが、この本が読みやすいのはそうした理由からでしょうね。
自分が普段使っている「敬語」は本当に正しいのか?
相手を敬い、誠実に思いを伝えるものになっているのか?
一旦立ち止まって確かめるための好著だと思います。