誰でも簡単に試せる「折れない心がメモ1枚でできる コーピングのやさしい教科書」(伊藤 絵美著・宝島社)

何かとストレスの多い現代社会。
誰もが何かしらのストレスを抱えながら生きています。

私は、ストレスは絶対に悪いもので、無くしてしまわなければならないものだとは思っていませんし、完全に無くなるものでもないでしょう。
ストレスを「本当は人間の成長に役立つ『善玉』」だと捉えた本を昔読んだことがあります。

いずれにしても、ストレスにきちんと気づき、それに適切に対処する、「ストレスとうまく付き合う」ことが一番大切なのでしょう。
ストレス対処法のひとつとして注目を集めているのが「コーピング」。

コーピング(coping)とは、「問題に対処する、切り抜ける」という意味のcopeに由来するメンタルヘルス用語。 特定のストレスフルな状況や問題に対して何らかの対処行動をとり、ストレスを適切にコントロールすること、あるいはその手法を指して「ストレス・コーピング」といいます。
コーピング(こーぴんぐ)とは – コトバンク
https://kotobank.jp/word/コーピング-178770

書店に行けば、コーピングの本がたくさん並んでいます。
今日はその中から、臨床心理士で精神保健福祉士、「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」所長の伊藤絵美さんの新著「折れない心がメモ1枚でできる コーピングのやさしい教科書」をご紹介。

誰でも簡単に試せる「折れない心がメモ1枚でできる コーピングのやさしい教科書」(伊藤 絵美著・宝島社)

コーピングとは、「ストレスへの意図的な対処」を指す心理学用語で、アメリカの心理学者リチャード・S・ラザルス博士が考案して世界中に広まったもの。

同じ経験をしたとしても、それがストレスになる人もいれば、ならない人もいるというように、一つの問題に対する捉え方は人それぞれで違います。

コーピングとは、きっかけも症状も様々なストレスに対して、その一つ一つに適切な対処を行なっていくことであり、その最大の目的は、ストレスに気づき、適切に対処し、ストレスとうまく付き合うこと、だということです。(P3-4)

今回は、本書の「Lesson1 自分のストレスを知る7つのステップ!(ストレスっていったいなんだろう?;グルグル回るストレスの悪循環;ストレスを細かくわけて見つめよう;日常的にストレスを観察しよう!)」の中から、いくつかご紹介しましょう。

そもそもストレスって!?

ストレスとは、「ストレッサー」「ストレス反応」の2つににわけてとらえます。

「ストレッサー」ストレス環境のこと。
愚痴っぽくて文句しか言わない同僚、細かいことばかりいう上司、近所の騒音など、人間関係も自然環境もストレッサーです。結婚や就職、出産なども環境の変化や責任の発生などによってはストレッサーになることもあります。

「ストレス反応」ーストレッサーに対する「心と体の反応」
イライラする、胃が痛くなる、不安になる、気分が落ち込むなどなどですね。

このように、ストレスは、ストレッサーとストレス反応がセットになったものだということです。

ストレッサーに対するストレス反応は人それぞれ。

「仕事が忙しすぎる」という状況は、AさんもBさんも同じだとしても、Aさんにとってはストレスになり、Bさんにとっては「自分が成長できるチャンスだ!!」ととらえるかもしれません。
Bさんの場合は、「仕事が忙しすぎる」ということがストレッサーにならないわけですから、それに対する心と体の反応である「ストレス反応」も起こらないでしょう。

つまり、ストレスとは、きっかけも反応も極めて個人的な体験であり、この問題にはこう対応すべきだと一般化できないもの。
だからこそ、一人一人が自分にとってのストレッサーとストレス反応に気づくことがまず大切な一歩だと著者は言います。

そして、実際のコーピングでも、「このストレスにはこのコーピング」とそれぞれをマッチングさせていくことが必要だと強調しています。

さらに、最も注意して欲しい点として著者があげているのが、「小さなストレスを積み重ねないこと」。

小さな傷が無数に集まってガラスをくもらせるように、ひとつひとつは小さな問題でも、時間をかけて積み重ねていくうちに澱のように沈殿し、やがては重大な心や体の病気を引き起こしてしまうかもしれません。そうなる前に、しっかりと自分の「ストレス」を観察して、何が問題なのかを理解することが大切です。

グルグル回るストレスの悪循環

自分のストレスに気づき、観察し、理解することを「セルフモニタリング(自己観察)」と言います。

セルフモニタリングは、
ストレッサー(環境)と
ストレス反応(心と体の反応)
の両方に対して行うとのこと。

ストレス反応に対しては、「認知」「気分・感情」「身体反応」「行動」の4つに分けてみていくんだそうです。

「認知」=頭に浮かぶ考えやイメージ

・次の休みも仕事かな
・またお金を使い過ぎてしまった
・LINE送ったのに既読がつかない。無視してるのかな
・職場では自分だけ孤立しているんじゃないか

「気分・感情」=心に浮かぶさまざまな気持ち

・憂鬱
・不安
・イライラ
・驚き
・辛い
・悲しい

「身体反応」=体に現れるさまざまな生理現象

・眠れない
・胃が痛い
・頭が痛い
・喉が乾く
・鼓動が速くなる
・肩がこる
・手足が冷たくなる
・めまいがする
・汗が出る

「行動」=ストレッサーに対して自分のとった振る舞い、動作

・怒鳴る
・わめく
・逃げ出す
・泣く
・物を投げる
・テレビを見る
・本を読む
・深呼吸をする
・その場から離れる
・横になる
・音楽を聴く

スレトス反応は、1つ1つが独立して存在しているのではなくて、お互いに影響しあい、ぐるぐると回り続けます。
自分の経験からも、何かのきっかけでマイナス思考が生まれてしまい、それがどんどん大きくなってさらに状況が悪くなっていくということはよくあります。
これが「ストレスの悪循環」。

皆さんも絶対ありますよね。

 

例えば、私が、会議で発表しなくてはいけなくなった、という場合。

「会議で発表しないといけなくなった」というストレッサー(環境)に対して、ストレス反応(心と体の反応)はどう現れるのでしょうか?
会議当日だとして考えてみましょう。

▷「認知」=頭に浮かぶ考えやイメージ
・大勢の前でちゃんと発表できるのかな
・失敗したらどうしよう…

▷「気分・感情」=心に浮かぶさまざまな気持ち
・憂鬱
・不安

▷「身体反応」=体に現れるさまざまな生理現象
・ドキドキする
・手が震える
・声が上ずる

そしてさらに、「手が震える」という身体反応が起きたら、「手が震えていることがバレたらどうしよう…」という「認知」となり、「焦り」などの「気分・感情」につながっていく、

この「認知」「気分・感情」「身体反応」の3つが相互反応でどんどん膨らんでいきます。

それが限界に達した時に、最後のストレス反応である「行動」が現れるのだそうです。

さっきの例だと、「泣き出してしまう」とか、「逃げ出す」などの行動が考えられます。

その「行動」によってさらに、「発表の失敗」「回りから白い目で見られる」「上司に叱られる」などの新しいストレッサーが生まれ、それに対して……
というふうに、「ストレスの悪循環」がグルグルと回り続けてしまうのです。

あるあるです。
とてもわかりやすいですね!!

本書では、この後、「自分のストレスを知る7つのステップ」として、

①自分のストレスを知る
②ストレスのきっかけを知る
③自動思考をつかまえる
④気分・感情をつかまえる
⑤体の変化をつかまえる
⑥自分の行動をつかまえる
⑦ ②から⑥をまとめよう

 

の7つのスタップに分けて詳しく解説しています。

本書には難しいテクニックは一切なく、とても簡単で、誰でもすぐに試すことができるというのが全体を通じての感想です。
ワークページやストレス診断テストなども付いていてとても便利です。

自分はダメな人間だといつも自分を責めてばかりいる人。
誰にもわかってもらえないといつも孤独感でたまらなく落ち込んでいる人。
マイナス思考グルグルで苦しまれている方。

ぜひ本書を読んで、自分なりのストレス対処法を見つけてください!!

目次

1 自分のストレスを知る7つのステップ!
・ストレスっていったいなんだろう?
・グルグル回るストレスの悪循環
・ストレスを細かくわけて見つめよう
・日常的にストレスを観察しよう!

2 コーピングでストレスから自分を助ける!
・コーピングとは、意図的に行なう自分助け
・コーピングは質より量! ほか

3 ぜひ試してほしい5つのコーピング
・ぜひ習得してほしいコーピングを厳選!
・頼れる人を「サポートネットワーク」で可視化
・「ポジティブなイメージ」を用意しておく
・自分をねぎらってみる
・「自分のいいところ」を見つける
・第三者になりきる「フレンドクエスチョン」

4 あるがままに受け止め、味わい、手放すマインドフルネス
・マインドフルネスは「最強のコーピング」
・ワーク1 自動思考には「と思ったのワーク」
・マインドフルネスはひたすらワーク!

5 「スキーマ」に気づき、より深く自分に近づく
・ストレスの背景にはスキーマがある
・スキーマ1 だれにもわかってもらえない
・スキーマにもマインドフルネスを!
・子どもの自分と大人の自分を対話させる